『かつげき!まんばぐみ-1-』
「おかえりー、どうだった、今度の出撃はよ」
障子を開けると、同室のソハヤノツルキが寝っ転がったまま声をかけてきた。
「・・・なんというか、三日月に全部持っていかれた」
「・・・ああ、今度もおいしいとこどりか、じいさん・・・」
「最後の最後までなんもかんも持って行って、俺たちいらねえんじゃねえ?って感じだったな・・・」
はあー、とため息をついて大典太光世は畳に胡坐をかく。
「そんなんで、隊長はどうだったの」
耳をほじりながら「やりにくいよなーあの三日月宗近が副隊長ってさあ」などという相方の発言は、大典太の脳を素通りした。
「山姥切国広は・・・」
「ああ」
その名前を口にするだけで。
つきんと、胸に小さな痛みが走る。
「やまんばぎりは・・・」
不穏な空気を感じてソハヤノツルキは身を起こし、少しだけ距離を置いた。
「今回も、めちゃくちゃ可愛かった・・・」
胡坐をかいたまま、器用に畳に打ち伏して大典太は身もだえした。
「なんなんだ、あの、メリハリのあるツンデレぶり!!俺、死ぬかと思った!!」
がんがんがん、と額を何度も何度も打ち付ける。
その鬼気迫る懊悩ぶりに、障子の向こうでさえずっていたはずの小鳥たちの泣き声がぴたりと止まった。
「・・・ああ、ね」
恋しちゃったのね。
恋しちゃってるね。
ソハヤノツルキはゆっくり奥歯をかみしめて、思うだけにとどめた。
けっして、言うてはならぬと本能が警告するからだ。
言葉にしたら最後。
火に油を注ぐ以外のなにものでもない。
ああでも。
「見てみたい気もするな・・・」
恋とやらの、行く末を。
-完-