『かつげき!まんばぐみ-3-』



 
 永禄八年、京都。
 降り立ったその瞬間から、目の前は戦場だった。


『我ら兄弟の手にかかればこの程度造作もないな。兄者』
『そうだね。え~と…髭切』
『俺の名は膝丸だ!髭切は兄者の名前だろ!』

 いつものように、源氏兄弟がイチャコラ始めた。
 ・・・というか、毎度毎度同じセリフ言いあってるよな?この二人。
 飽きねえのか、それとも、マジで記憶にないのか、どっちだ。
 大典太光世はあくびをかみ殺した。

 ちらりと後ろを振り返ると、生成の衣を頭から被った姿が視界に入る。
 山姥切国広。
 隊長として第一部隊の指揮を執ることになった付喪神。
 早くて、
 強くて、
 綺麗な男。
 さらに後ろには国宝のじじいがぴったりくっついて歩いているが、それは見なかったことにした。
 そして。
 ひらりひらりと風にそよぐ被布の下に見え隠れするのは、彼の美脚をぴたりと包み込んでいる灰色のスラックス。
 月の光がふいに、彼の足元を照らした。
 その瞬間。
 灰色の布の裂け目から、象牙色の肌が覗いた。
 ふ、ふともも・・・。
 なんて・・・。
 ごっくん、と、喉が鳴る。
「どうした?大典太光世?」
 めざとく爺が指摘する。
「う・・・、うう」
 うおおお・・・・っ。
 雄たけびを上げたいところを必死に腹の中に抑え、その分、左手に有り余った力の全てを注ぎ込む。
 都合のいいことに目の前には敵の姿が出現し、内心、時間遡行軍に感謝した。
 がき。
 敵の首を鷲掴みにしたら、あっけなく折れた。

『おいお前ら。戦闘中だ。いつまでも喋ってる場合ではない』

 平静を装いつつ力を失った傀儡を放り投げながら、実はドキドキしていた。
 大丈夫かな。
 盗み見したの、ばれてないかな。

 俺はクールだぜと格好つけたくて顎を上げたら、今日入隊したばかりの骨喰藤四郎がなんか張り切っているのが見えた。

『新入りは真面目にやってるぞ』

 まんばちゃん、俺の活躍観てくれたかな。
 
 ところがなんと、その新人の前に大太刀が現れた。
 ここは俺が・・・と身構えた瞬間、三日月のじいさんが出張って、なんかかっこいい所を見せ始めた。
 じじい、邪魔だ。
 だが、あのじじいの性悪ぶりは、何度か出陣を共にして骨身にしみているので歯噛みをしつつ引き下がる。
 そして、あろうことかじじいはとんでもない台詞を口にした。

『山姥切』

 まるで、ポチでも呼ぶかのような口ぶり。
 じじい、まんばちゃんになんてことを!!

 叫ぶ間もなく、疾風が走る。
 ドシュッ。

 山姥切国広が、大太刀の亡霊を一太刀で切り捨てた。
 ああ、カッコイイ。
 さすが、おれのまんばちゃん。

 そして、着地した瞬間にはらりとめくれたぬのきれから、灰色の生地に包まれた美尻が覗くところもぬかりなく目に焼き付けた。

 頭隠して、尻隠さずって、まさにこれだよな。
 意外と隙だらけだよな、まんばちゃん。
 そこがまたたまらないんだけど。
 まんばちゃんのナマ尻も、あの太腿みたいに綺麗な色しているのかなあ。
 象牙色っていうか、茶わん蒸し色っていうか…。
 いやいや、その中間かな、何色っていうのかな。
 大典太は無表情を装いつつ、鼻息を荒くした。

 大典太光世はその見てくれからは想像がつかないだろうが、茶わん蒸しが大好きだ。
 プリンも、杏仁豆腐も、口の中でとろりととろけるその感触が何よりもたまらない。
 その、大好きなものと、山姥切国広の肌の色が近いとソハヤノツルキに昨夜熱弁をふるったのに、なんだか適当に流されて悲しかった。


 見てくれと違う思春期小僧。
 彼の名前は大典太光世。
 天下五剣の一つと呼ばれる宝剣で、ある。



 -完-


→ 『刀剣乱舞』シリーズ入り口へ戻る

→ 『過去作品入り口』へ戻る

inserted by FC2 system