『うまい話には裏がある -5-』
軽く仮眠したあと私室で軽食を摂り、ナタリアは私室のソファで膝の上に乗ってだらんと横たわる猫のティムの背を撫でながら考えた。
鉄は熱いうちに打つべきだ。
今すぐにやるべきことは?
真っ先に頭の中に浮かんだのは、家令のグラハムが身一つで拘束されていることだ。
あれは、本当に運がよかった。
まさか彼があそこまでの失態を犯すとは。
先ほどさんざんな目に遭ったローレンスは今頃、グラハムを同席させなかったことと今日を合わせて三日使えないことを後悔しているだろうが、今更もう遅い。
撤回することができず、もんもんと復帰を待つだろう。
なら、次の手はこれしかない。
「執事のセロンと侍女長を呼んでちょうだい。即刻相談したいことがあると」
アニーに頼んだ後、ティムの腰をとんとんと叩く。
すると、彼は満足げに喉を鳴らし、ナタリアの膝をもみ始めた。
ああ、癒される。
天国だ。
「何か御用でしょうか」
二人そろって呼び出しとのことで、執事のセロンと侍女長のサリバンがやや緊張気味に入室した。
「単刀直入にいうわね。グラハムが下級侍女たちを好きなようにしているのは、貴方たちが容認しているからなのかしら」
半分も聞かないうちに、二人の顔色が変わった。
「・・・好きなように、とおっしゃるのは・・・」
「アニーたちのような身元がしっかりしていて替えの利かない子たちはさすがに手を付けていないけれど、ランドリーやスカラリーの子たちに無体を働いているようね。しかも、屋根裏の寝室で」
ローレンスやナタリアの身の回りの世話や客人対応をする使用人たちは、全員そこそこの家の出だ。
下級貴族や郷士や商人の生まれで、ウェズリーに勤めることで得る何らかの実益を家が望んで差し出された人々。
だから、どの貴族の屋敷よりも識字率も高い。
それは休憩室に本を提供しながら彼らを観察し続けるうちにわかったことの一つだ。
ただし、洗い物など身体を酷使する職種のメイドたちはみな本棚を遠巻きに見ている。
文字を覚えてみたい様子なので、簡単なテキストを入れるかと思案しているうちに消えた娘が数人いた。
早期に幾人か捕まえて尋ねたときは下級メイドが逃げ出すのは珍しくないと興味なさげに返されたが、回をかさねぽろりと漏れた言葉をつなぎ合わせていくうちにようやく謎が解けた。
下級メイドがグラハムに寝込みを襲われ、泣き寝入りをするか逃げ出していると。
とくに妊娠した場合は闇に葬られている可能性があるとさえ。
この屋敷の規則として、男性使用人と女性使用人の居住区は引き離されている。
恋愛そのものを禁止してはいないが、屋敷内の互いの寝室に訪れるのは風紀上取り締まられていた。
それなのに、なぜかグラハムは屋根裏の女子寮に侵入している。
入口には侍女長の部屋があるにもかかわらず。
つまりは、この屋敷の使用人たちの誰もグラハムに逆らえないということだ。
「この件について私が改善しようとすると、貴方たちの今後に支障が出てしまうかしら」
二人の顔色は真っ青を通り越して白くなっていく。
「あの・・・わたくしの口からは・・・どうか」
先に懇願したのは侍女長だ。
下級メイドは人身御供にされ続けた。
それを、彼女は嬉々として差し出していたわけではないのかもしれない。
命にかかわるような何かがある。
「そう。逆らえない理由については深く尋ねないことにするわ。なら、私が勝手に改善命令を出すのは良いかしら。ちょうど鍵を取り上げていることだし、今のうちに女子寮の入り口の鍵を特殊なものに付け替えるとかね」
執事と家令と主人が持つ鍵はおおむね屋敷全体共通の一本を複製して所持している。
「鍵…ですか」
おそるおそる口を開くセロンに頷いて見せる。
「そう」
たくさんの部屋に一つ一つ作るときりがないため、少ない鍵数である程度の場所を開放するためだ。
「一本、増やします。そして、それを私と侍女長以外が所持することを禁じます」
本当ならグラハムのみ除外したいところだが、今回は男子禁制に重点を置く。
「そのために、改装工事をすぐに行ってほしいの。女子寮をこの三日の間に全面改装してほしいから、外部からも建具師を呼んで」
言いながら、事前に書いておいた図面を広げて見せる。
「・・・これは・・・」
覗き込んで二人は息をのんだ。
「廊下に面した扉は簡単な内鍵を設置。まあ、蹴り上げたら開くけど、ないよりましね。それと、部屋同士の壁を一部撤去、引き戸式の扉を設置しましょう。そこも一応簡易鍵つけて寝るときはかけてもらう」
本来は一人か二人入る程度の小部屋が連なる形になっていたため、完全密室で押し込まれたら後がなかった。
正直なところ、ざっくり壁を取り払って大部屋にしようかとも思ったが、流行り病が発生した場合あっという間に広まってしまう。
なので、折衷案として行き来のしやすい引き戸。
いざとなったら蹴り破って逃げられるように。
そして、物音が筒抜けであることもいくらか助けになる。
「同時に冬に向けての完備もします。敷物を部屋数の分だけ手配しましょう。暖房の件も職人たちが来たら相談したいわ」
「ナタリア様・・・」
セロンは複雑な表情で息をつく。
ナタリアがウェズリーに来て手を入れるまでは、劣悪とまではいわないが使用人たちに割り当てられた部屋の状態はあまり良くなかった。
なので、急遽衛生面と寝具をまず改善した。
しかし冬を目前に知ったのは、寒さ対策についてはほぼ自衛ということだ。
人数が多すぎて行き届かないと言えばそこまでだが、そもそもローレンスもグラハムも運営に関心がなさすぎる。
賃金も待遇も良くない労働現場は意欲と倫理観をだんだんとそいでいくものだ。
今まで滞りなく生活できたのはたまたま運がよかったのか、もしくはウェズリー大公の威光を振りかざしてのことだったのか。
なんにせよこのままでは破綻する。
「とりあえず指揮権が私にあるうちに、できるだけのことをしておきたいの。それは権力が欲しいわけではない、二年後から先のウェズリー侯爵家のためだと理解して。そして、可能なことだけでよいから協力して頂戴」
「・・・承知しました」
二人は同時に頭を下げた。
その間、ずっとナタリアの膝の上にのっていたティムは、ぱたりとしっぽをひとふりしたあと、満足げなため息をひとつついた。
執事と侍女長を送り出したあと帳簿を眺めていると、パール夫人と何かを大事そうに抱えているリロイがやってきた。
「改めまして、契約締結と卒業試験終了おめでとうございます」
二人に深々と礼をされるが、声と顔が笑っている。
「ありがとうございます。まあ、あの程度のことで平和になるとは思えないけれど」
あくまでもいったんこちらが優位に立っただけで、気を抜いた瞬間にすべてひっくり返ってしまうのだ。
グラハムがダドリーへやってきた時から始まったゲームは、ウェズリー大公が息を引き取るまで終わらないだろう。
えんえんと果てしない神経戦が続く。
「それでも、やられっぱなしよりましですわ」
二人に着席を勧めるとアニーがすぐに紅茶と軽食を運んできた。
「外出許可も取り付けたことですし、これで大手を振って王太子宮へ行くことができますね」
「ええ。やっと」
騎士の普段着に近い質素な乗馬服での朝駆けなど非公式の外出は許されていたが、『ウェズリー侯爵夫人』として公式に振舞うことは今までできなかった。
社交界からの誘いを含め外部からのナタリア宛の手紙の一切を、大公からの指示でグラハムが握りつぶしていたからだ。
先ほどのローレンスと協議の最後に、グラハムは全体を統括する家令からローレンスの執事へと降格し、セロンが当面家令を代行することを提案し、力業の説得の末合意をもぎ取った。
すでに屋敷の運営にナタリアが着手していたため、そう難しいことではない。
「というか、ふだん何してるのでしょうね。ローレンス侯って・・・」
「何もやっていないから、年中発情するしかないんじゃないですか」
ほうと、ため息をつくパール夫人の隣で、リロイが辛辣な言葉を吐く。
「・・・そうか。暇だから、ああなのね・・・」
ナタリアは軽い頭痛を覚えて額を抑えた。
セロンが言うには、ローレンスが十六歳で爵位を拝命したのと同時にグラハムが家令に着任した。
以来、この十年近く経営のほとんどを丸投げしたままだ。
派閥内の裕福な友人たちと遊びっぱなしなのは、結婚式の雰囲気で十分にわかった。
「ようするに彼は、見た目がよいだけの傀儡。これほどうまい仕事はないですね」
とにかく、リロイは容赦ない。
しかし実際、行政や財務補佐官はグラハムの指示に従って働いている。
屋敷の差配は執事であるセロンが行うが、人事権は実質グラハム。
彼の機嫌を損ねたものは紹介状を破り捨てられて放逐される。
紹介状は使用人たちの生命線だ。
これがなければウェズリーを出た後に貴族の屋敷で働くことはほぼ無理となってしまい、低賃金の日雇い労働へ身を落とすこととなる。
こうなると、影の主人と言ってもいい。
そんな彼が不自由な旅路をおしてまで、使者としてわざわざダドリーまで足を運んだのは奇跡だ。
「どう考えてもグラハムを叩けばもっといろいろ出てきそうな感じなのだけど、それを大公が知らないわけはない…。なぜ目をつぶっているのかしら」
こうなると横領くらいやっているだろう。
それもかなりの額を。
「グラハムについては、今、王太子妃様の手の者が調べを進めている最中です」
「何から何までありがたいわ」
さすがは、パール夫人だ。
「私のこれから二年の仕事って、マリア様を女当主に仕立て上げることだけだと思っていたけれど。ローレンス・ウェズリーの当主教育ももれなく含まれているのね・・・」
はああーと、ナタリアは深くため息をついた。
「正直なところ、そこまできっちり仕事をする必要はないと思いますが。一切を放棄してのんべんだらりと二年間お過ごしになっても全く問題ないのですよ?」
そもそもウェズリーは仕事をさせるためにナタリアを呼んだわけではない。
手助けをする義理はないのだ。
「わかっています、自己満足なのだということは・・・」
お膳立てすればするほど、あの怠け者は頼ってくるだろう。
そうなると、寄生する宿主をグラハムからナタリアへ鞍替えするだけのこと。
「『殺すのが惜しいくらい役に立つ女』であることが、とりあえず延命の手立ての一つだと思って始めたことですが」
影の薄い存在なら、大公たちの思うつぼだ。
すぐさま近くの湖に沈められていただろう
「私は、マリア様の今後がどうしても気になって…」
「まあ、そんなことだろうと思いましたが」
ナタリアのおざなりな撫で方が不満だったのか、ティムがいきなり起き上がりパール夫人の膝に飛び移った。
「あらあら、まあまあ!」
パール夫人は喜びの声を上げる。
ティムはごろんと横になるなりさっさと腹を見せ、彼女の施術を一身に受けて満足げに喉を鳴らしている。
この浮気者め。
ナタリアは恨めし気な視線をティムへ送った。
「・・・ナタリア様。マリア・ヒックス嬢はテレサ・ベインズ夫人とは違うこと、わかっておられますよね」
ティムを蕩けさせながら、パール夫人がいきなり核心をついた。
「・・・そうですね」
ふわりふわりと動くティムの尻尾を目で追いながら答える。
「わかってはいるのですが、どうしても重ねてしまいますね」
テレサ・ベインズはダン・ベインズ第四騎士団団長の妻だった。
しかし、その結婚生活はほんの数か月あまり。
余命いくばくもない状態でダドリーへとたどり着き、この世を去った。
その原因は、ウェズリー大公の長女とその娘。
彼女たちに痛めつけられ、ぼろぼろになったところをベインズに助け出されたが、あまりにも遅すぎた。
マリア・ヒックスと同じく、とある男爵の庶子として生まれたテレサは成人するまでロゼリア修道院へ放り込まれ、容姿の美しさから父親の駒として還俗させられてすぐに見初められた。
いや違う。
生贄として目をつけられたのだ。
ウェズリー大公の長女は貴族の女性たちばかりで行われた大きな茶会で、テレサと出会った。
修道院から出たばかりの少女は従順で穢れを知らず、探していたモノそのものだった。
その、モノとは。
金と権力に弱い父親を持つ弱小下位貴族の娘。
できれば、わが娘と同じ年ごろで背格好も同等。
そしてなにより、処女であること。
理由は娘の婚約者にあてがう為である。
この国では一般的に高位貴族の結婚に限って女性の純潔を求められる。
家もしくは国の契約であるため、初夜が完璧になされたかの確認のために翌朝ベッドもしくは新婦の診察が必要となる。
他国では数人の立会人が初夜のベッドを取り囲み、仔細をじっくり監視することもあるくらいだ。
『白い結婚』は、取り決められた金や利権のやり取りにおいて火種が生じることがままある。
それを防ぐための『確認』と『証明』。
新郎の身体が新婦の中に完全に挿入されてこそ、婚姻という契約が成立する。
しかし、その行為は慣れない者同士で行う場合、主に女性がかなりの苦痛を伴う。
そこで、高位貴族たちの間で密かに行われたのが閨教育。
そして、ウェズリー大公の長女は婿の『処女を抱く練習台』としてテレサを金で買った。
すべては、目に入れてもいたくない可愛い娘の結婚の準備の一環だ。
道具として使うことに良心が痛むことなどない。
もちろん、テレサの父はウェズリーの翼の下に入れることを大いに喜んだ。
しかも多額の見舞金まで積まれたのだ。
二つ返事ですぐに庶子を差し出した。
おかげで閨教教育は順調で、指導につけた者からも良い報告が聞けた。
しかし、ここで誤算が生じた。
役目を終え戒律の厳しい辺境の修道院へ放り込んだはずの女を、婿がこっそり連れだして王都内の別邸に囲い、頻繁に訪れていたのだ。
事実を知った娘は半狂乱になり、女を憎んだ。
そして彼女たちは誘拐させ、思いつく限りの残虐な私刑を楽しみ、森に捨てた。
その非道な行いを知ったダン・ベインズが駆け付けて保護したとき、テレサは屍同然だった。
「私は、マリア様が第二のテレサ様にされてしまうのではないかと思うと、居ても立っても居られないのです」
これから進むのは茨の道だ。
少なくとも、既にウェズリー大公に喧嘩を売ってしまっている。
このままでは、故郷の家族や助けてくれている人々を危険にさらすことになるかもしれない。
せっかくの忠告を無下にする自分はなんて愚かだろう。
頼まれもしないのに、勝手に決めつけ走り出してしまった。
ただの自己満足だとわかっている。
だけど、どうしても忘れられないのだ。
枯れ枝のように細く頼りなかったテレサの指先を。
そして、半身をちぎられたように苦しんだダン・ベインズの背中を。
ナタリアは目を閉じ、ぐっと背を伸ばして深呼吸を一つする。
身体の奥から息をすべて吐き出してから目を開き、顎を上げた。
「パール夫人」
「はい」
「今更気づいたのですが、私はそうとうな強欲です」
「はい?」
「なので、その強欲ぶりをとことん極めようと思います」
「・・・ほう」
パール夫人はきゅっと唇の両端を上げる。
「そう、きましたか・・・」
「ええ」
「ふふ・・・。それはまた・・・」
二人は見つめあったまま、喉を振るわせ低い声で笑いあう。
「久々に血が騒ぎますわあ」
物騒な言葉に再び起き上がったティムはリロイのそばへ歩いていき、ぐっと眉間にしわを寄せ、なあうと一声訴えた。
「ああ、そうだな」
指先で優しくティムの小さな額を撫でる。
「俺もちょっと耐えられないよ、この空気・・・」
まるで、竜巻の前触れに来る冷たい風のようだ。
リロイはため息をついた。
「それでも、離れる気はないけどな」
彼の小さなつぶやきに、ティムは耳をぴくりと振った。
「ナタリア様がそうおっしゃるならば、ご提案があります。・・・ただし、王太子妃さまにいったんご相談申し上げてからにはなりますが」
パール夫人は姿勢を正した。
「マリア様の教師についてですが、できうる限り最高の布陣を敷くことにしましょう」
ローレンスとの契約の場で提示した「教育の付与」はあくまでも、パール夫人の中ではナタリアに便宜を図る人物を頻繁に出入りさせるための口実に過ぎなかった。
「わたくしを一度マリア様に会わせていただけませんか。小一時間ほど会話をさせていただければ、これからどのような教育が必要なのかを割り出すことができるでしょう。その上で、王女の並みまで仕立て上げてくれる教師たちを紹介いたします」
当初の予定では、あくまでもぎりぎり侯爵夫人として申し分のない程度の指導。
夜会、お茶会でのふるまい、手紙のやり取り、屋敷での差配。
二年弱という期間と妊娠出産を考えるとカリキュラムとしてぎりぎりだろう。
正直、その程度の教師はパール夫人の図書仲間で事足りる。
爵位ならばせいぜい子爵。
腕は良いが生まれも育ちも雑多だ。
そこをさらにランクを上げ、各国の大使の来訪の時にも立ち会えるだけの技量を身に着けるとなると、教師自身が侯爵夫人などかなり高位となる。
「それと本人のやる気次第ですが、ナタリア様がウェズリーを離れた後も継続することをお約束いたしましょう」
その時点で、マリア・ヒックスはようやく16歳。
法的には成人で庶民なら子供を産み始めるが、貴族令嬢はおおむね未婚で親の庇護のもと淑女教育を受け続けている状況が普通だ。
理由の一つに王立学院で特例のみだった女子の就学が先代の王より正式に許され、王都での暮らしが可能もしくは寮生活も厭わない貴族令嬢が通うようになった。
これにより卒業を待っての挙式が増え、おおよその適齢期が十八歳以上となったのだ。
「それは・・・。願ってもないことです。ご協力いただけるならこれほど心強いことはありません」
王妃教育なみの指導を受けたということは、修了すれば周囲への顔が立ち自信が持てるだけではなく、王家の後ろ盾がありと保証されるも同じ。
それと同時に、高位貴族の知己も得るというおまけ付きだ。
「ご結婚祝いの一つとお思いください」
「何よりの贈り物です。ありがとうございます」
和やかな空気が流れたところで、リロイが持参していた箱を長椅子に置いた。
「私からもナタリア様にお渡ししたいものがあります。運び込んだだけなので贈り物というわけにはいきませんが」
箱を開き、中から取り出してテーブルの空いている場所へおかれたのは衣類。
「これは・・・」
「そろそろ、好きに動いても大丈夫ではと思いまして」
次々と重ねられたのはスラックスを何本か、ブラウス、ベスト、ジャケット、ハーフコート…。
「暴れたくなってきた頃合いでしょう」
「・・・よくわかったわね」
「もう、四年のお付き合いですから」
「本当は少し前にダドリーからレドルブ侯爵邸へ届いていましたが、なかなかお運びする機会がなくて」
「・・・あれも?もしかして」
「もちろんです」
リロイが頷くと、ナタリアの瞳にさあっと明るい色がさした。
「なら、今から良いかしら」
「はい」
リロイは極上の笑みを浮かべる。
「俺は、そのために来たのですから」
窓から差し込む光を浴びきらきらと輝くリロイの美しさを、うっかり目にしてしまったアニーは思わず拳で胸を押さえた。
「ああ、愛しい私の子よ、久しぶりね」
ナタリアはそれを抱きしめ、うっとりと目を閉じる。
「・・・正気か」
命知らずな誰かのつぶやきが地面を這う。
「おい・・・」
慌ててそばにいる者が注意のために動くのを、上の方から低い声が下りてくる。
「いや、誰だって思うだろう」
この場で一番大柄なダビデが深い息をついた。
「信じられないだろう…。俺だって自分の目が信じられない。まさか、奥様が・・・」
ここは騎士団の練習場。
上級士官を除いた数十人の騎士たちが自主鍛錬しているさなかに、彼らとよく似たいでたちの者が二人現れた。
一人は、数日前から西の館に滞在しているレドルブ候家の従僕、リロイ・ウインター。
もう一人はなんと、この屋敷の女主人になったばかりのナタリアだった。
どこかの私設騎士団の支給服と思われるそろいの上着とぴったりと足を包むスラックス、ブーツを二人は着用している。
「ごめんなさい練習中に。ちょっと私たちも混ぜてもらうわね」
その声は、間違いなく侯爵夫人のもの。
一瞬、何を見て聞いたのか男たちはわからず、石のように固まった。
王都の貴婦人たちは常にドレス姿だ。
乗馬の時も極力足及び体型を隠すためにふんわりとしたスカートをまとい、いかに優雅に見せるかに重きを置く。
狩猟大会に参加してもあくまでも『華』の役割でしかなく、男たちに交じって獣を追うことはない
たとえ騎士に女性がいてもあくまでも護衛としてであり、その職に就くのは代々騎士か平民出身。
それが、この国の常識。
一部の目撃談で、夫人が男性用乗馬服で早朝馬をかっ飛ばしている噂は聞いたことがあっても、誰もが冗談だと思っていた。
だが、深い茶色の髪を大雑把に束ね、すらりと長い手足を晒して堂々と大股で歩く姿は、どう見ても生粋の騎士だ。
そして、武器庫で保管していたらしい長剣をトリフォードが持参したのを見るなり、彼女は喜色満面で駆け寄り、受け取った。
そうして、今に至る。
この騎士団の女主人が。
ナタリア・ルツ・ウェズリー侯爵夫人が。
二十歳の淑女が。
装飾は一切なく、使い込まれた雰囲気の長剣へ「会いたかった…」と愛おしそうに口づけ、頬ずりする姿。
「これは、いったい・・・」
我々は、いったい、何を見せられている。
ナタリアのためにリロイが運んだ剣は二振りある。
一振りは、実践で使っていたもの。
もう一振りは対戦練習用に刃が潰してあるもの。
ダドリー領内の王立騎士団駐留所の近くには武器製造職人たちの集落があり、そこで一番の腕利き鍛冶師が双子の剣を作ってくれた。
重さも性質もほぼおなじなので、練習がそのまま直で実践に生かされる。
この二振りは10歳のころからの相棒だった。
ちなみに、トリフォードが今差し出したのはもちろん練習用の方である。
「うん、じゃあウィンター卿いいかしら」
「もちろんです。久々のお相手、腕がなります」
刃を陽の光にあてて状態を確認しながら尋ねると、リロイは数メートル離れたところで立ち止まり、優雅に礼をした。
「では、まずこの子で軽く・・・お願いね?」
「承知しました」
リロイが鞘から剣を抜き、構える。
慣れた手つきで長剣を軽く一振りした後、にっとナタリアは笑った。
「では、はじめ」
「はい」
二人は同時に駆け出し、剣を振り上げる。
カン・・・と、硬質な音が演習場に響き渡った。
騎士たちは全員、固唾をのんで見守る。
内心、令嬢のままごとに付き合わされる若い従者に同情しながら。
「うそだろ・・・」
打ち合いが始まって数分もたたないうちに、誰もが己の目を疑った。
長剣は、初心者には許されない武器だ。
騎士団の中でも鍛錬を重ねてようやく許される剣で、この国の女性騎士たちは軽量に作られたレイピアがせいぜいだ。
しかし、ナタリアは手足のように自在に扱い、相手を攻め続ける。
そして、対峙しているリロイという男もなかなかだ。
女をたぶらかして生きていけそうな美貌にもかかわらず、隙のない動きで応え、時には遠慮ない力を侯爵夫人に向かって叩きつける。
二人で長剣をせわしなく攻め合っているというに息がぴたりと合い、どこか優雅だ。
その様はまるで・・・・。
「舞を舞っているみたいに綺麗ね」
トリフォードの隣には、いつのまにかパール夫人が立っていた。
「あなたは、何回かナタリア様のお相手をなさったのよね。トリフォード卿」
「・・・はい、ご存じでしたか。しかし、私の時は木剣だったので・・・」
朝駆けついでに何度か木剣で手合わせをした。
しかしそれは、「型」の確認のようなもので、ここまでの動きはない。
「ふふふ。木剣だったから、だと?そうおっしゃるなら卿もまだまだですわね」
口元に閉じた扇を当ててパール夫人は笑う。
まもなく背後からガラガラと音がして振り向くと、従僕たちが荷車を重そうに引いて、パール夫人のそばで止める。
覗き込むと大きな木箱の中にはみっしりと木剣が詰め込まれていた。
「今朝到着しました。王太子妃様からの贈り物です」
「これは・・・」
長さは長剣に合わせてあるが、素材はいろいろだ。
木の性質によって訓練の時使い勝手が違う。
しかし、白樫など強度がある分値段の張る木剣も多く入れてある。
中でも最も繊維が詰まり硬質でかつ貴重な琵琶材があった。
パール夫人の了承を得てからそっと指で触れ、トリフォードはその感触を確かめる。
「かなり高価なものもありますね」
「安物だと持ちが悪いらしいので・・・。まあ、この後すぐにわかりますよ」
わっと拍手と歓声が上がり、二人が木剣の箱から顔を上げると、ナタリアたちの打ち合いがいったん終了したらしく、彼らが向き合い礼をとっているのが見えた。
アニーが駆け寄り、二人にタオルを手渡す。
汗を拭きとりながら振り向いたナタリアはパール夫人と木剣を載せた荷車に気づいた。
「届いたのですね。助かります」
「ちょうど良かったです。久々にナタリア様の演習を拝見でき、役得ですわ」
「パール夫人にそう言っていただけるのは光栄ですが、ただのうっぷん晴らしですよ?」
「いえ。木剣はこれからも定期的にお届けしますので、どうぞお好きなだけお使いくださいと、王太子妃さまより言い遣っております」
「では、ありがたく」
ナタリアはリロイを振り向いて尋ねる。
「十本行っとく?」
「いやいや・・・ナタリア様。気持ちはわかりますが、お互いブランクがあるので三本で」
「七本」
「いや、せめて五本」
「わかったわ、五本にしましょう。白樫でいいかしら」
「琵琶で五本とか、俺が死にます」
一瞬、リロイ・ウィンターが素に戻る。
「ははは。そうね。私も毎晩素振りしかできてないし」
ナタリアの言葉に、騎士たちはこっそりアニーを捕まえて尋ねる。
「・・・まさかと思うが、奥様は・・・」
「ええと・・・。夕食後ひと段落したら、その・・・。小一時間ほど・・・?」
ローレンスが東館で生息している間、ナタリアは就寝までのびのびと過ごしている。
最初は警戒して貴婦人のまねごとをしていたが、身体を動かさないと落ちつかないらしく、寝室がほぼ密室なのをよいことに軽い鍛錬を欠かさず行うようになった。
アニーたちには内緒にしてもらっていたが、それももう本日解禁だ。
「じゃ、始めましょうか」
適当な木剣を二本掴んですたすた歩き始めると、リロイは三本持って後を追う。
二人は適当なところに三本ぽいっと放ると、構え合った。
「では行きます。五本勝負」
「はい」
二人は同時に一礼し、次の瞬間。
ガンッ・・・ッ。
凄まじく重い音が響き渡る。
木と木の打ち合いなら、もっと軽く高めの音のはずなのだが、全く違う。
しかも、連打に次ぐ連打。
ふたりの体の動きも先ほどの比ではない。
それなのに。
【×××、×× ×××× ×××、×××××―っ!】
耳慣れない言葉をナタリアが木剣を振り下ろしながら叫ぶ。
しかも、それに対し。
【×× ××××× ×××、××××・・・】
剣を交える男もどうやら同じ言語で返している。
【×××、××× ×、××××~!】
【××・・・】
【×××、×××、×××× ××】
【×××】
【××】
絶え間ない攻撃と口撃の連続だ。
しかし、二人ともどちらも辞めずにひたすら続ける。
「ぶっ・・・っ。まったく、あの二人ときたら・・・」
たまらず、パール夫人が噴き出し、腹を抱えて笑いだした。
「・・・彼らが言っている言葉、わかるのですか」
トリフォードが首を傾けて尋ねると、彼女はメガネの下の目じりから涙をぬぐいながらうなずく。
「ええ、まあ。ばらしても良いかしら。今使っているのは北のザルツガルドの言葉ね。ほら、わが国とはほぼ断絶に近いから、あまりわかる人いないだろうって思ったのでしょうね。言いたい放題言い合ってるところ」
「ザルツガルド?」
「ナタリア様の母君のヘンリエッタ様の出身国なのよ。ナタリア様の体格はザルツガルド系ね」
説明している間にも、二人は速攻の言い合いと打ち合いを続けている。
「ぶは・・・っ」
いつの間にかトリフォードたちの近くにいたダビデが噴き出した。
「た、たまらん・・・」
口元を大きな手で覆い方をふるわせダビデが悶絶する。
「あら、あなたもしかして・・・」
岩のように縦にも横にも大きい男を見上げてパール夫人は首をかしげた。
「はい。私は両親がザルツガルド出身です。昔、商隊の警護をやっていてそのままこの国へ定着したもので…。ふ、ふっ・・・くくく」
パール夫人へ返事をしながらも、耳がナタリアの叫びを聞き取ってしまうらしく、大きな目から涙を流して爆笑するのを耐えている。
「これは、すごいですね。お二人はザルツガルド語で罵倒の限りを。・・・ぶふっ・・・っ」
とうとう、ダビデはこらえきれずに膝をついて笑い始めた。
「そう・・・なのよ、わかる人がいて、うれしい・・・わ・・・ははははっ」
パール夫人も扇子を握りしめ、胸を叩きながら笑い続けている。
貴婦人の鎧をかなぐり捨て、大口を開けて笑っている。
どうやら二人が使っているのは、『ヘンリエッタ様』がとても使うような言葉ではないらしい。
貴族で言うなら、『悪いことば』。
親や乳母から鞭で叩かれるレベルの罵詈雑言。
しかも、賭場で聞くような『べらんめえなまり』らしく、ダビデとパール夫人が笑いすぎて呼吸困難に陥っている。
「どこから・・こんなのを・・・」
ひいひいと喉から空気を振るわせながらダビデが言ったその時。
バキッッッ!
ナタリアが振り下ろした木剣が折れた。
「・・・」
ナタリアは冷静に折れた刃先の軌道を目で追った。
誰もいない所へ飛ぶのを確認したと同時に残された木剣を放り出し、直ぐに身体を沈め、地面に両手をつく。
ガンッ。
リロイの容赦ない一振りがナタリアのすぐ脇に落ちた。
それをわずかにそらして避け、そのまま地面を蹴り、先ほど撒いた木剣の一つへ向かって駆けだす。
もちろんリロイはその後を追い、背中に向かってまたもや繰り出す。
刃先が届く前にナタリアは木剣をつかみ、受け止めた。
ガッ・・・。
「これは・・・」
「これが、ルールなのよ。身分に関係なく、実戦を想定した戦いをすること」
「実践?」
「ダドリーはね。山岳地帯も抱えているから色々悪いモノが潜伏しやすいの。とくに、傭兵崩れがヤリたくなったら降りてくるから困ったものよ」
ザルツガルドをはじめ接する他国との多少の小競り合いはあるが、ここのところ戦争らしきものはない。
そうなると仕事にあぶれるのが傭兵をはじめとした戦闘稼業の者たちだ。
戦闘に明け暮れた彼らは、普通の生活になじめず、平穏な社会からはじかれる。
能力のある者、軍律に同意できる者は騎士団へ就くことができるが、そうでないものはあっという間に給金を使い果たし、路頭に迷う。
戦争は、あらゆる禁忌を合法化する。
平時は、隣人を愛せ、奪うなと諭し、それに基づいてこそ人々の営みが成り立つ。
しかし戦時は、他人の土地と財産を奪い、女を犯し、弱いものを理由なくなぶり殺しにすることが許され、むしろ推奨される。
他者を叩き潰す強さこそ正義だ。
雄であることを誇ってこその人生だ。
そんな世界を享受しつづけた者が、戦争が終わったから明日から倫理と法に基づいた従順で平凡な暮らしに戻れと言われても無理がある。
彼らがゆっくりと「日常」へ戻る準備機関が設けられたなら、少しは違うかもしれない。
上層部でそのような論議が多少はあったが、『はみ出し者』のことを国はすぐに忘れた。
結局、無責任にも彼らは野に放たれた。
一度人肉の味を覚えてしまった野生動物は元の森の生活へ戻れないように、戦地の快楽を覚えてしまった者の根源はなかなか変えられない。
そうして、行き場をなくした男たちは徒党を組み、己の欲望に沿った法を作り、本能の赴くままに行動する。
腹がすいたら、誰かの成果を奪いに行けばイイ。
女は無理やり犯すのがイチバンだ。
弱い奴は殴り殺してシマエ。
そんな彼らに、騎士団の上品な戦法は通用しない。
ひたすら泥臭く。
脳と力を最大限に使って戦わねば、勝てない。
「だからこの訓練の時は、常に全力。そして、相手の欠点を必ず攻める。その方が絶対いずれ役立つのですって」
パール夫人が語る間も、二人は激しく立ち回る。
がんっと地面を蹴り、大きく飛び上がったナタリアが体重をかけて振り下ろす。
【☆☆☆、☆☆ ☆ ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆!】
「あ。今度は神聖語だわ。ウインター卿は話せるのかしら」
神聖語とは、司祭たちが公の場などで聖書を読み上げるときに使う言葉だ。
文法的にはこの国の基礎となるが、単語や発音は全く違うため、解る人が少ない。
【☆☆☆!】
受けたリロイはわずかに眉をひそめたものの、すぐ足を狙って払い、ナタリアはまた後ろに飛びずさる。
「あ、仕込まれたのね…」
暗号として使っているのか、とトリフォードは頭の中で考えを巡らせる。
元傭兵たちで神聖語を使えるものはほぼいないだろう。
【☆☆・・・!】
【☆☆、☆☆ ☆☆☆ ☆ ☆☆☆☆☆!】
【☆☆☆☆☆☆~~!】
会話の中身が分かるパール夫人はにやにやしながら成り行きを見ている。
「・・・何を言い合っているのか教えていただいても?」
「もうね、悪口は言い飽きたみたいで、ナタリア様は実家のご飯が食べたいって言いだして、二人でメニューをひたすら叫んでいるの」
「・・・すごいですね、これだけ打ち合っているのに」
「うーん、郷愁?もう、今すぐ帰りたいのに帰れないはけ口が、爆発しているようね」
次の瞬間、今度はリロイの木剣が折れ、彼が次のものを取りに走った。
そして、また、打ち合いが始まる。
【◇◇ ◇◇◇・・・】
【◇◇◇◇ ◇◇】
リロイがまた違う言葉を発して、ナタリアが返す。
ざっと見まわして、今度も彼らの会話が分かる人はいないようだ。
「もしかして、この五本勝負のルールの一つは、言語ですか」
「ご名答。先に言葉を発した方の言語で始めて折れたら変更可能ですって。別に何語でも良いし一度使った言語はダメというわけではないらしいのだけど」
剣術の訓練をしながら、多国語の練習。
「すごいスパルタですね」
集中が途切れた時に負けるのは目に見えている。
「ちなみにこれはダドリーと西北で接しているサイオン国の言葉ね」
「はい、これはさすがにわかります。『もう疲れた』って言い始めていますよね、ウインター卿」
トリフォードは苦笑する。
そういうわりにはリロイの動きは全く衰えていない。
驚くべきことだ。
「あら。・・・もしかして、トリフォード卿のご実家は・・・」
「はい、大公閣下に頼み込んでダドリーと領地替えをしたトランタン伯爵の係累です」
正直に答えると、ああと、パール夫人はため息をついた。
「ならギルフォード家とも近しかったのね」
ギルフォード家は、長年住み慣れた土地への愛着から領地替えの時にトランタン伯爵についていかずに残った一族だ。
「父とは従兄弟だったと聞いていますが、私は十代前半で家を出ているので・・・」
両親が離縁した時に母に付き添い一緒に家を出たが、すぐに他界したため、トリフォード家についてはあまり知らない。
「そう・・・そうだったの」
何事かを憂うようなパール夫人の様子に眉をひそめていたら、また木剣が折れ、とうとう最後の試合が始まった。
ナタリアがまた、最初のザルツガルド語へ戻す。
「そのうち話すつもりだったのかどうなのかはわからないけれど・・・。よそから聞くより今知っておいた方があなたも気構えができて楽だと思うから・・・」
パール夫人はとんとんとんと、扇子の端を顎に当てて思案しながら言葉をつづけた。
【ナタリア様の今は、ギルフォード一族の乱に起因するわ】
パール夫人はサイオン語で語り始めた。
なるべく周囲に聞かれたくない話なのは一目瞭然だ。
ギルフォード一族の乱。
初耳だった。
【どういうことですか、それは・・・】
トリフォードもサイオン語に換えて、尋ねる。
視線の先には、軽々とリロイの剣を払いのけて攻めの姿勢に変えるナタリアの生き生きとした戦いぶりがあった。
二十歳の伯爵令嬢が。
ウェズリー騎士団の頂点に立てるほどの剣豪ぶりであるなどと。
それは才能なんて生易しい理由からではないのだと。
パール夫人はそう言いたいのだ。
【どうか、教えてください】
二人は騎士たちの輪から少し離れた見通しの良い場所へ移動する。
【あれは十二年くらい前になるかしら・・・】
-つづく-
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